テキストだけでなく画像や音声も同時に理解できる「マルチモーダルAI」の実用化が進み、これまで別々のツールで処理していた業務が一つのAIで完結できるようになってきた。ここでは実務での具体的な活用事例を紹介する。

現場写真からの報告書自動作成

建設現場や設備点検の業務では、現場の写真をAIに読み込ませるだけで、状況の説明文を含んだ報告書の下書きを自動生成できるようになっている。ひび割れや損傷箇所を画像から検出し、その内容をテキストの点検報告書として整形する。従来は現場担当者が写真を見ながら手作業で文章化していた工程が、大幅に短縮されている。

会議の音声と資料を組み合わせた議事録

音声だけでなく、会議中に画面共有された資料のスクリーンショットも同時に読み込ませることで、発言内容と資料のどの部分について話しているかを紐づけた議事録を作成できるようになった。「スライドの3ページ目について議論した内容」という形で、音声とビジュアル情報が統合された記録が残せる点が従来の音声書き起こしツールとの大きな違いだ。

カスタマーサポートでの画像付き問い合わせ対応

製品の不具合を訴える問い合わせに写真が添付されている場合、マルチモーダルAIはその画像から問題箇所を特定し、テキストの問い合わせ内容と組み合わせて一次回答の下書きを作成できる。サポート担当者は生成された下書きを確認・修正するだけで済むため、対応時間の短縮につながっている。

小売業での棚割り・在庫管理

店舗の陳列棚を撮影した写真をAIに読み込ませ、欠品状況や陳列ルール違反を自動で検出する取り組みも広がっている。テキストベースの在庫管理システムと連携させることで、現場スタッフが手作業でチェックしていた棚卸し業務の一部を自動化できる。

導入のハードルと注意点

マルチモーダルAIは画像認識の精度が現場の照明条件や撮影角度に左右されやすいという課題がある。本格導入の前に、実際の業務環境に近い条件でテストを重ね、誤認識が発生しやすいパターンを把握しておくことが、現場での混乱を防ぐために重要だ。

今後広がる活用領域

現時点では画像とテキストの組み合わせが中心だが、今後は動画や3Dデータまで統合的に扱えるモデルの実用化が進むと見られている。複数の情報形式を横断して扱えることの価値は、業種を問わず現場の業務プロセスを見直すきっかけになりうるため、自社の業務にどう応用できるかを継続的に検討しておく価値がある。